春の訪れにふさわしい、黄綸子地蒲公英流水文字文様小袖裂です。
摺匹田で表された「来」の文字と、春を象徴する蒲公英(たんぽぽ)に流水文様の部分が軸装されております。黄綸子地は時代の傷みとしみがみられ、刺繍と金糸の部分が落ちている所もありますが、長さのある空間の中に配された蒲公英の位置がバランス良く、「来」の文字から受けるインパクトもあり印象的な作品です。滝のように真っすぐに流れ落ちる流水が雅な雰囲気を醸しております。
蒲公英は鼓草(つづみぐさ)とも言われますが、こちらの小袖は歌を意匠化した文様に思われます。きものにその歌意の文字が全体に散らされて表現されていたように思います。柳田国男氏の著書『野草雑記』(昭和三十一年 甲鳥書林版 P.40参照)に「津の国の鼓の瀧を来てみれば川べに咲けりたんぽぽの花」という歌が記されておりますが(西行法師の詠んだ歌を草刈の童子が滝を「打ち見れば」と改めた物語)、この裂の「来」に当てはまるように思えて面白味があります。長さのある軸ですので寸法をご確認下さい。
軸先は若草色のやきもので、軸装した所有者が春の野の色をイメージされたのだと思いますが裂によく似合っております。総縁は灰色の正絹、一文字は淡い灰色がかった浅葱地に二重蔓牡丹唐草金襴で共に近代の織物です。箱は付いておりません。ゆうパックにてお届けいたします。
色目が再現できておらず申し訳ございません。全体の構図を御覧いただければと思います。
画像では「来」の文字が濃い黒色に写っておりますが、実物はこちらほど黒くなく、灰色っぽい色調になっております。
文字の色目はこちらのように灰色っぽいです。コンディション等ご確認下さいませ。
姿のよい蒲公英です。
蒲公英の部分に経年のしみがあります。
左下の葉はもともと刺繍はされておりません。
環境で異なると思いますが、こちらの画像が実物の黄綸子地の色目に近いです。