大正時代の小函に入っていた江ノ島土産の桜貝

8月も半ばに入り、今年も夏休みがやってきました。
夏休みといっても裂を解いて整える、裂の仕事はエンドレスです。
たまには住まいの整理もと思いますが、片付けようのない部屋を見ると、今はいいかと思って、また違うことをやりはじめてしまい、そのうち冬がやってきます。
でも夏休み気分を味わう楽しみがあって、それはできて一日、よくて二日のことなのですが、毎年楽しみにしていることです。

 

それは普段よりもずっと早起きをして澄んだ朝を散歩して、それから開館時間とあまり差がなく図書館にゆき、その日ばかりはゆっくりのんびり、夕方まで図書館で過ごすのです。勉強なんてことよりも、静かで、広くて、本が探せて、とにかく自由で居心地がよいわけで。

 

お昼は図書館の食堂でごはんを食べて、また好きな時間に戻ります。
目も肩もくたびれてきたら、館内の喫茶店でコーヒーを飲んで、アイスクリームも食べて、ひと息つく。外は真夏の猛暑のかんかん照りで。そのうち時計を見ると、もう4時半くらいになっていて。
そろそろコピーを急がないととか思いながら、さて、これからどこへゆこうと気分を変えれば心弾む。夜の巷に消えるのだ。さささっ。

 

身支度して図書館を出ると、夏の夕暮れ特有の、茜雲の夕焼けが。
これからぶらっとお酒を呑みに、どこ方面かに、てくてくゆく。
混んでなくて、騒がしくなくて、ほどほどにほおっておいてくれるお店が気分に合う。そんなお店はあまり見つけられなくて冒険ができず、結局知ったお店になるのだけど。昼間の暑さが残る夏の夕暮れこの時間、重い荷物も持たず、気ままにお店に立ち寄って、軽く呑んでひととき過ごす。夏休みっと思いながら。

 

こうして書くと、何だか平凡すぎるほど平凡ですが、夏のこの一日が持てること、これがとっても楽しみで、それが私の一番の夏休みなのです。

 

蝉の聲と茜雲、早くも夏の終わりが見えてきます。
残る後半、また味わいある裂を探します。

 

2016 晩夏に

古裂古美術 蓮
田部浩子