北風の日

 

様々なことがら。
不安も、落ち込む気持ちも、元気のなさも。
心に棲んでいる、そういったものが顔をのぞかせて、
そちら側に引っ張られそうになった日。

 

ふと気づくと、冬の平和な陽ざしが、室内に降り注いでいて。
窓を見上げると、遠く高い空が、ぬけるように蒼くて。
つよい北風が、音を立てて木々を揺らしている。
梢に残る最後の枯葉が、一斉に斜めに吹き飛ばされて、
少しの間、辺りの時間が、斜めに動いたのを見た。

 

陽の光りにきらきらと、それはそれはきれいに照らされている。
冷たい大気も、北風も。
舞い散る枯葉も、鳥の聲も。

 

美しい日。
今日は美しい日だなあ、と声に出した。
ほんとうに美しい日だった。

2019.12.29

古裂古美術 蓮
田部浩子