猛暑の夏となりましたが、そろそろ8月も終わりに近づき、季節は晩夏となりました。少しずつ日も短くなってきて、夏の終わりを時々に感じます。
先日道を歩いていたときに、ふと見ると、ビルとビルとのほんの隙間に水引草が茂っており、花こそまだでしたが、点々としたあの赤色が間もなく見られるほどに、穂先が勢いよく伸びておりました。また、先日道すがら通り過ぎた家のお庭では、塀の上からのぞいた背の高い柿の木に、まだ小振りでも、真っ青な柿の実がぎっしりと実っておりました。自然はいつも時の到来を知っていて、もう暫くすれば暑さもやわらぎ、空も高くなって、天高く馬肥ゆる秋となるのでしょう。
足元の身近な自然や、力尽きるまで続く蝉時雨、夕風が吹く頃から陽が沈むまでの間の、夏の夕暮れどき特有の空の色に顔を上げたりして、こうして夏の終わりを愉しみたいところです。
夏休みといえば、いつも楽しみにしていることがあり、そのことを「蓮の道草26」に記したので、この散文を「夏休みのゆくえ2」などとタイトルしたのですが、この8月はその楽しみな過ごし方が、楽しみ度50%にて終わったので、少しばかり残念でありました。夏休みの楽しみなひととき、それは開館時間から図書館に入って、ゆっくりと一日を過ごすのです。お昼は図書館の食堂でのんびりごはんを済ませたら、また好きな時間に戻り、少しくたびれてくると図書館内の喫茶店でコーヒーを飲んで、アイスクリームも食べ、そのうち4時半ともなると、コピーの時間に焦りだす。外はかんかん照りの厳しい猛暑、涼しい館内にいることの幸せ感。そろそろ閉館が近づけば、ため息のひとつでもついて、帰る支度をし始める。さて、これからどこへゆこうと気分を変えれば心弾む。軽く呑んでひととき過ごす。夜の巷に消えるのだ。サササッ。混んでおらず、騒がしくなく、一人でも、ほどほどに無関心でいてくれるお店が気分に合って、やっぱりいい。
この夏休み、調べたい事柄で図書館へは足を運んだものの、用事に押されてお昼の食堂から叶わず図書館を後にした。お気に入りの一日コースはお預けになったので、なんとなく未消化な気分が残ります。それにしても、とても平凡すぎる楽しみなのですが、これが何とも夏休み気分が味わえてうれしいわけで。夏休みのゆくえ、来年も記してしまいそうです。
10月は特別企画展 裂のほとりⅥ「-縞・格子・絣 展-」を開催いたします。縞・格子・絣、趣のある裂を集めました。裂を整える作業が籠って裂と向き合う手作業の為に、展示会までの期間の開店日が少なくなってしまいますこと、誠に申し訳ございません。展示会ではいろいろな裂たちをご紹介させていただきます。どうぞぜひお運びいただけましたら幸いです。小さなひとひらでも、気に入っていただける古裂を見つけていただけますように。
暑かった8月も、もう少しで過ぎてゆきます。
風が吹いて、季節は巡ります。
2019.8.25
古裂古美術 蓮
田部浩子