常緑の緑を想い。
緑地無地絹 江戸時代 18-19 世紀

 

今日は大晦日です。
今年もあとわずかで暮れゆきます。皆様も今時分はお忙しくお過ごしのことと思います。
今年は秋に再び金沢展をおこなわせていただきましたこと、心より嬉しく思いました。これからも続けられるかぎり、古い裂の傍にいて、裂のほとりで過ごしてゆきたいと願っております。

 

いつも除夜に、私はとても大切にしているルリスタンの小さな鐘を飾ります。
自分の除夜の鐘のつもりです。その小さな鐘は舌が失われているので、鳴らない鐘なのですが。今日の昼間、陽ざしが良いときに、仕舞っていたのを出しました。
小さな箱の紐をとくたびに、早いところ何か包み裂を作ってあげなくてはと思いながら、もうずいぶんと時が経ってしまいました。そしてかわりの無い年越しに安堵しています。お正月の花にしている日本水仙が、ほどよい香りを漂わせています。

 

今年は除夜の鐘が風にのって聞こえてくるでしょうか。私のところでは、ほんとうにかすかに聞こえてくる年と、聞こえてこない年とがあるのです。未だにどこのお寺からなのかがわかりません。風向きなのだと思います。聞こえてこない年は、聞こえてこないだけで、鐘は鳴らされているのだからと気持ちを畳み、夜更けまで起きているのです。
除夜の鐘について、「音」の神秘性についてを記している、なかなか面白い短い論文があって、毎年大晦日にはその論文に目を通します。論文といっても難しいものではありません。自分がちょっと面白く読めるくらいの、暮れの気分になるのにちょうどよいような感じのものです。最後まで読まなくともよいのです。気分で読みたくなるのです。

 

そろそろこちらを終わりにして、柚子の皮でもむく予定です。
皆様今年も本当にお世話になりました。ありがとうございました。
来る年が、皆様にとり、良いお年となりますように、心よりお祈り申し上げます。
来年も、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 

 

2022.12.31

古裂古美術 蓮
田部浩子