木綿霰文型染  明治~大正頃

 
先日、写真の霰文様の型染を引き解きました。
裃で現れたものですが、糸質からみて江戸期ではなく、明治から大正くらいの裂に思えます。この裂なら水洗いしたほうが、かえって裂がやわらかく扱いやすくなるだろうと判断し、そのようにして整えました。
江戸期にみられる伝統文様の霰文は、二月の季節に似合う気がしています。少しずつ天候が変化してきて、気温が暖かな日も出てきたけれど、雪がちらつく寒い日もまだ続く。寒暖の差で、夜半にふいに雷が鳴ることも。そんな夜は人知れず、霰も降るかもしれません。
 
節分の豆撒きを終えたこの月は、花の季節もまだ先で、辺りはしいんとしています。それでも時々に春がひそんでいることがわかり、そんな気配がなんともいえず、とくべつ好きなひと月です。
春が来るもっと前、北風が吹く晴天の日、立春、湘南、江ノ電、金花糖、
二月に思い浮かぶことをこう記していると、しぜんと海が見たくなってきます。
 
もうずいぶん前に姿を消した、逗子に在ったなぎさホテル。昭和の木造建築の品の良い、それは素敵なホテルでした。こじんまりとした芝生の庭に、湘南道路を越えた海風が吹いてくるのです。当時は時折り雑誌に紹介されており、憧れて背伸びして泊まりに行った想い出です。海が好きで、毎週末海へ出かけていたという。時間の過ごし方は、いつのまにやら変わるのですね。
 
そろそろ二月が終わります。
街路樹に見る木々たちの、枝の色目が変わってきたように思います。
ほんのり明るい色彩を湛えてきたようです。
ひな祭りも近づいて、季節はしだいに早まります。
まもなく三月がやってきます。

2019.2.23

古裂古美術 蓮
田部浩子