MIHO MUSEUM エントランス正面 信楽の山々が迎えてくれる。

 

 

先日出張の足を延ばして、信楽の桃源郷、MIHO MUSEUMに行ってまいりました。
春季特別展の3月14日(土)~6月7日(日)に「MIHO MUSEUM コレクションの形成 -日本絵画を中心に-」が予定されていたのですが、新型コロナウィルス感染拡大防止のため臨時休館していたところ、9月1日(火)から開館される運びとなりました。事前予約制による秋季特別展として、上記展覧会が新会期の12月13日(日)までの間開催されております。(休館日は期間中の月曜日です。月曜が祝・休日の場合は翌平日が休館日。)臨時休館を知った春には、この状況では今年は伺えないだろうと思っていたのですが、開館のニュースにそわそわし始め、今回の出張に合わせて予定いたしました。

 

MIHOコレクションの見ごたえのある桃山から江戸時代の絵画と、作品に添われている表具裂を観ることも愉しかったのですが、MIHO MUSEUMの所蔵品中、自分がもっとも惹かれるガラス製ファラオの頭部(おそらくアメンホテプⅢ世・エジプト 前1400年-前1350年)に久しぶりに逢いたい目的がありました。同じく観たくなる所蔵品は若林奮の1986年の作品「多くの川を渡り 再び森の中へ」になりますが、こちらは現在展示されていないので、いつかの機会に訪れたいと思います。また、今回の特別展で展示されている鎌倉時代の地蔵菩薩立像は思い入れのある作品で、地蔵菩薩立像のあのつよい眼(まなこ)に逢い、暫くぶりにお目にかかれたその年月を想いました。

 

当日は早朝に京都に到着後、午前中の早い時間にお伺いする約束の所用を終えてから信楽へ向かいました。 京都駅から4つ先の石山駅で下車し、そこからバスで終点のMIHO MUSEUMまでは約50分です。発車後、バスの窓から石山駅の街中を興味深く眺める。 道路沿いのこじんまりとした喫茶店や、シャッターの降りた金物屋さん、古い木造のすばらしく雰囲気のよい建物、お花屋さんの店先。見慣れない街の日常の姿は、通り過ぎるだけの記憶にとどまらない風景なのですが、この街に暮らすとしたらどんなだろうとか、それとなく昭和の匂いのする喫茶店の外からの様子に、ここのお店にはレトロなプリンとかあるだろうかなどと触角を動かしたりして、バスの窓から見る流れる街の在りように、自分の気ままな意識を様々にくぐらせながら、風景をただ通り過ぎてゆく。自分の気持ちの安らぎに繋がるいい時間です。
だんだんと田畑が広がる風景になり、山奥へと走るバスからは渓谷の冷たそうな水の流れが見えてまいります。色づく木々の紅葉に季節の移ろいを感じながら、時間をかけて目的地に向かうことの平和さと愉しさを思いました。

 

MIHO MUSEUMでは、2015年9月15日~12月13日に開催されました「ニューヨーカーが魅せられた美の世界:ジョン・C・ウェバー・コレクション」展の際、ミュージアムショップにて当店のポストカードを販売させていただきました。 ジョン・C・ウェバー氏のコレクションには日本の染織品も含まれていることからうれしい機会を頂いたのですが、その折にお世話になりましたご担当の方と思い出話をさせていただいたり、ファラオ頭部の鑑賞できる展示室にもう一度足を運んだり、4時の閉館時間まではあっという間のひとときでした。 広い館内を巡り、ミュージアムショップで栞などを選び、エントランスから見える信楽の奥深い山々の緑を遠く眺めて、心に風を入れて翌日の出張本番にそなえ、そして日々の充電をしました。またのMIHO MUSEUMの機会を楽しみにしたいと思います。

 

感染防止対策の取り組みから現在レストランは休業されていますが、縮小営業をされているカフェではパスタも頂けます。私が到着した午後1時過ぎにはまだ頂けましたが、昼食をはさまれるとしたら、もしかするとお早目にカフェに向かわれたほうがよいかもしれません。また、来館には事前予約が必要ですのでご注意下さい。
きっと12月13日の今年の閉館に近づくほどに、MIHO MUSEUMの辺りの紅葉の素晴らしさが増すことと思います。おすすめのひとときです。

 

 

 

 

                           

エントランスから入口を見る。

 

 

 

 

 

雨上がりのアプローチ。

 

 

 

 

 

山奥にあるMIHO MUSEUMは、数日前の朝の気温が7℃だったそうです。
来館した午後、すでに辺りの空気はひんやりと初冬をうかがわせていました。

 

 

 

 

 

早朝到着の京都では雨脚の強い雨が降り続いていましたが、石山駅に着く頃に雨は上がり、MIHOに着くと雲間からは青空が。

 

 

 

 

 

4時閉館。地下の電気自動車乗り場の風景。
トンネルの道のりを抜けてMIHOの入口まで送迎の電気自動車に乗せてもらう。
復路のJR石山駅までの最終バスに乗車。京都駅に戻る。

 

 

おわり

 

2020.11.3

古裂古美術 蓮
田部浩子