2021.8

  • 二年ぶりの展示会「裂のほとり」を前に

     

     

    夏の夕空

     

    瞬く間に日が過ぎて、八月ももう、数えるほどになりました。
    展示会出品の古裂を整える作業を続けています。今回開催の「裂のほとり」は、コロナ禍の影響で「縞・格子・絣 展」以来、約二年ぶりの企画展となります。このような状況下での開催となりますが、感染防止対策に十分留意して皆様のお越しをお待ちしております。きびしい状況が続いておりますので、ご無理のないようにご予定いただけましたら幸いです。

     

    ご来場に際しご留意いただきたい点と、整理券配布等に関する詳細は、整い次第追ってお知らせいたします。今回感染防止の観点より会場への入場人数を制限させていただき、ご入場をお待ちいただく可能性があることなど、ご不便をおかけすることがございます。安全に古裂のひとときを愉しんでいただけますように十分対策に努めてまいります。何卒皆様のご理解ご協力を賜りますようお願い申し上げます。素敵な古裂を御覧いただけますよう、準備を進めてまいります。

     

    写真は八月に入って間もない頃に撮ったものです。
    猛暑の日の夕空は、空や雲が虹を帯びたような色になることがあり、この日上空はすごい色に照らされておりました。窓を開けると、夜が近づいて木々たちが藤城清治さんの影絵のように見えました。
    もう晩夏となり、秋の味覚もそろそろ店先に並ぶでしょうか。
    引き続きどうぞ皆様御自愛下さいませ。

     

     

     

     

  • DMのご発送

     

     

    裂のほとりⅦ DM

     

    おところをお知らせいただいているお客様に昨日展示会「裂のほとりⅦ」のDMをお送りさせていただきました。DM便は普通郵便よりも到着に少しお時間がかかるようですが、御覧いただけましたら幸いです。

     

    状況が難しい中開催に向けて準備を進めておりますが、どうぞご無理のないように、そして今の状況が変化してくれることを願っております。 引き続きホームページにて展示会情報をお知らせしてまいります。 どうぞよろしくお願いいたします。

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

  • 9月開催予定 前期「単色の美」のご案内

     

     

    蹴鞠装束の鞠袴の裏地 平絹 紅花染め
    江戸後期 18世紀

     

    9月開催予定

     

    裂のほとりⅦ 
    前期「単色の美」のご案内です。

     

    9月28日(火)-29日(水)に開催予定の「単色の美」は、天然染料で染色された江戸時代の絹・木綿・麻(大麻または苧麻)・紬を中心として、単色の古裂のみで展開する企画展になります。
    今展では、単色のものでも地文様が織り出されているものにつきましては出品に取り入れずに、全てplainの無地の裂にて展開する形です。単色無地に染め上げられた古裂の、古く魅力的な色彩の表れと、素材による色感、目に映るひとつの色の深き浅きに、そこに自然をみるような美しさが在ることをご紹介させていただきたいと思います。

     

    「単色の美」に出品予定の裂々は、寺院に奉納され、年記銘が墨書されている染織品のように江戸時代の年記は認められてはおりませんが、江戸時代のきものや江戸時代の衣服の一部に使われていたもの、寺裂の裏地を自身で引き解いたものなど、江戸期の裂と当店が判断しているものを軸に出品いたします。今回二日間と短い会期ですが、「色」の存在は自分の中でとても大きな存在としてあるので、一度ならず今後もささやかでも何らかの形で色彩の企画を温めてまいりたいと思います。

     

    どの地域や階層においても、身に纏う色が古代より続く天然染料によって染められていた、その最後の時代が江戸時代ということを思うと、日本の色彩文化を考える上で江戸期はとても重要な時代であり、現代の服飾の世界におかれましても何か新鮮な発見がこの時代の中に在るような気がしています。今に伝え遺された天然染料による古裂の色に、江戸時代の草木たちの息吹が潜んでいること、日本の単色無地の古裂の豊かな色彩の世界の一端を御覧いただけましたら幸いです。

     

    状況のむずかしいときでございます。どうぞご無理のないよう、そして状況が変化してくれることを願いながら準備してまいります。
    引き続きホームページのお知らせを気にしていただけましたら幸いです。
    どうぞよろしくお願いいたします。

     

     

    【写真】
    こちらは江戸後期の蹴鞠装束の白地鞠袴の裏地に使われていた紅花染めの平絹です。
    以前入手したこちらよりも時代の古い、江戸中期くらいあるように思える白地鞠袴の裏地にも、同じような色調の紅花染めの平絹が使われておりましたので、もしかすると白地の鞠袴にはこのような色の絹布を裏地に使用するというような約束ごとがあるのかもしれません。

     

     

    *こちらの記事は「展示会/Exhibition」の前期「単色の美」をスクロールしていただいたところにもございます。

     

    *お問い合わせを頂いております小冊子『裂のほとり』、また「単色の美」に関する印刷物の発行は今のところ予定がなく申し訳ございません。お問い合わせ下さり誠にありがとうございます。ぜひまた機会をみつけたいと思っております。

     

     

     

     

     

  • 葉月 八月

     

     

    木綿藍地源氏車文様型染裂 
    江戸時代 19世紀

     

    八月になりました。
    昼下がりのアスファルトの照り返しに「盛夏」の言葉を思い浮かべながら、古裂の詰まった重いバッグを手に坂道を上ります。仕入れた裂を洗い整える作業をするため、店から自宅へ、自宅から店へと古裂を持ち運ぶ日常です。
    住まいの辺りは坂道の多い所で、それぞれにある坂の名前が何年経っても覚えられないまま、古裂とともに上っては下り、下っては上る。
    暑さと重さにうつむきながら無心に歩いていると、道をぬける風と蝉の聲だけのひとときがやってきて、何年か前の夏、一番暑い時間帯に訪れた京都のあるお寺で、猛暑のためか、広いお堂に自分しかいないその時の蝉時雨を想い出します。幾多にも重なり聞こえる蝉の聲が声明のように感じられ、止まない蝉時雨がお堂の静寂な空気を際立たせていて、山側の木々の緑が風に吹かれていました。
    涼しくした室内で裂の作業をし、午後四時頃になると、何となく以前よりも陽が翳ってくるのが早くなったことに気付きます。八月になったばかりというのに、秋のきざしがもう在ることに、めぐり動く時の刻みを想うのです。

     

    七月十二日から発令されました東京都における緊急事態宣言が、八月三十一日まで延長されました。現在急増の傾向にある都内の感染拡大の状況を踏まえ、店舗営業を八月三十一日までお休みさせていただくことにいたしました。
    ご不便をおかけいたしまして誠に恐れ入りますが、何卒ご理解を賜りますようお願い申し上げます。九月、十月の「裂のほとり」展示会も控えております。十一月は金沢にて開催予定です。何かございましたらどうぞお気軽にお電話にてお問い合わせ下さいませ。
    今月もどうぞよろしくお願いいたします。