蓮の道草 #16

ことほぐ

お正月はお餅を食べて、氏神様にお参りして。
日なたの境内。へこんだ大鈴。
松飾りの緑が目にも清い。

風はなく、果てのない空。
今日はいつもよりゆっくり歩く。
荷物も持たない。
黒い土から草の芽が見えた。

太陽にことほぐ。
蒼い空にことほぐ。
空の向こうにことほぐ。
草木にことほぐ。
窓に来た雀にことほぐ。
日々がめぐる。

ことほぐという言葉の発音、独特の、その不思議な響きを心の内でゆっくり繰り返しながら目的地へとてくてく歩いていたら、何かはわからないが、自分の中に何か丸いものが生まれてきて、その丸いものが、すべすべと回転しはじめるような、平らな気分になった。静かな空気に包まれたお正月のこと。
言祝ぐ(ことほぐ)は言葉で祝いを述べることだというけれど、
心の中で、ことほぎをもって空を見上げ、ことほぎをもって雀と顔を合わせた。

雀はあんなに細い枝にとまっているのに、枝はそうしなっていない。
一体何グラムの体重なのか、窓の溝に来てまばたきしてこちらを見ている。
視力がすごい。ちゃんと感情がある。羽があって、空が飛べる。
何グラムの中に隙間なく満ちている、すごい、すごいこと。
空中を自分で飛べるなんて、人間では見られぬ景色。何が見えているのだろう。
雀、お正月ですよ、と言ってみた。雀は暫くそこにいた。

新年になりました。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。  

2016年 初春に

古裂古美術 蓮
田部浩子