蓮の道草 #30

裂のほとりで

単色無地の裂 江戸時代

下染めの、鬱金の黄色が現れた紅絹(もみ)の裂は包み裂の裏裂に。
暗みを持つ濃赤の、蘇芳染の木綿をみつけて古銅の水滴をくるむ。
湖水のような緑色の紬の裂は、古い時代の写経の表具へ。
藍染めの、冴え冴えとした縹色の紬の裂は、現代の書によく似合う。
雑木林に溶け込みそうな土器色をした木綿の裂は、古染付の皿を包むのに。
僧侶の坐具に使われていた濃い栗皮色の麻の裂は、現代作家さんの白磁の作品と取り合わせて。

写真はそれぞれ素材の異なる、江戸時代の無地の裂たち。
ひと色だけという豊さの、無地の裂は愉しい世界。広くいろいろに使われる。
色合いと質感を、眼で掌で愉しんで、主体に時代の気分を添わせてくれる。
ささやかな空間にかけて、机に置いて、江戸時代の草木からの色を愛でている。

古く好ましい色を探し蒐めることは、時間のかかる地道なことでも、蓮では色の“色”を大切に思い、単色無地の、Plainな裂を追いかけています。
時代を経てきた染め色の、色のしじまを目にしていると、何かそこから広々としたものが感じられて、色には平和なものが満ちていることに気づきます。
裂のほとりであそんでいると、時間の流れが一段と早いです。
そのうち“裂のほとり展”でもしたいものと、色の深き、浅きを手にとりながら、静かに思いを巡らせています。

2016.12.9

古裂古美術 蓮
田部浩子