2017.3

  • 貝母の花

     

     
    春の陽ざしに貝母(ばいも)の花が咲いていました。
    伺った先を失礼しようとした時、花の話になり、
    今裏で貝母が咲いていますと、ご案内いただきました。
    自然のままに飾り気なく、あどけなく咲いている姿が格別で、
    おことわりして写真に撮らせていただきました。
    いつも春になるとこの場所に咲くのだそうです。
    お知らせの欄に、春のお知らせです。
     
     
     

  • 「熈代勝覧に描かれた江戸の暮らし」特別セミナーのお知らせ

     

    解きもの 江戸時代


    ホームページ「蓮の道草」19にて、拙いながらに触れました絵巻「熈代勝覧」(きだいしょうらん・ベルリン国立アジア美術館所蔵)が、現在開催中の江戸東京博物館特別展「江戸と北京 18世紀の都市と暮らし」(4月9日まで)において、約11年ぶりに日本に里帰りしています。
    「熈代勝覧」は1805年、文化2年ころの神田今川橋から日本橋までの間の大通り(現在の中央通りになります。)と町並みをつぶさに描いた一巻の絵巻になり、1995年にドイツの中国美術収集家ハンス・ヨアヒム・キュステル氏の親戚宅の屋根裏部屋から発見されました。作者は不明で、どのようなことからこの活気に満ちた絵巻が誕生したのか、また、どのような経緯を経て日本から海外へ渡っていったのか、その履歴ははっきりわかっていないと聞いています。
     
    約17メートルからなる「熈代勝覧」には、江戸日本橋にみられる多くの商いのようす、あちらこちらに見かける振り売りといわれる行商の様々な業種、ゆきかう姿からうかがい知れる人々の多様な階層、三月の雛売りの出小屋のようすや、季節の桃の花売り、道の辻に立つお菓子売りなど、当時の江戸の中央での日常と貴重な風俗がこまかく記録され、描かれています。
    中でも興味を引くのは天秤棒に古着とおぼしき着物をかけて裏道などを歩いている、振り売りの姿です。また、「三つ物屋」(みつものや)と呼ばれた古着、もしくは着物を引き解いた「解きもの」などを商う振り売りからも、当時相当数の繊維製品が流通していったようです。古裂古美術蓮も、取り扱いの裂を思えば現代の三つ物屋、などと思っています。古い染織品を引き解いて、「解きもの」を大切に整えます。三つ物屋に関しては今後も引き続き調べたり、知ってゆきたいことのひとつなので、時代の振り売りへの興味は深まります。
     
    写真は江戸期の端裂ですが(こちらはやわらかなちりめんと紬です。)、このようなちょっとした寸法の端裂も当時三つ物屋に扱われていたようですし、引き解かれたひとひらを購入することは庶民の女性たちの暮らしの中の愉しみであり、普段の心を明るくする日常の彩りとなったことでしょう。ひとひらだからこその工夫を愉しんだことと想像します。
    時代を経るごとにしだいに小さくなってゆく宿命の裂も、この熈代勝覧の中でいろいろな姿として見うけられます。雛売りの小屋に並ぶ雛の衣裳にみられる緋色も、今に遺された江戸期の裂に重ね合わせてその色を感じ取ることができます。
     
    今回の里帰りにあたり、2009年に「熈代勝覧」の複製絵巻を共同で制作し、東京メトロ「三越前」駅の地下コンコースにその設置をされた名橋「日本橋」保存会さんと日本橋地域ルネッサンス100年計画委員会さんが主宰され、江戸東京博物館学芸員の江里口友子氏を講師にお迎えして「熈代勝覧」についてのお話しを伺う特別共催セミナー、「熈代勝覧に描かれた江戸の暮らし」が開かれます。
    染織品関連には触れられない今回とは思いますが、日本橋の賑わいと喧噪、江戸の時間と文化が見てとれる「熈代勝覧」についてご興味をお持ちの方は、ぜひともご参加されてみてはいかがでしょう。
     
    名橋「日本橋」保存会 / 日本橋地域ルネッサンス100年計画委員会
    特別共催セミナー
    「熈代勝覧に描かれた江戸の暮らし」
     
    日時:3月16日(木)18:30~20:00
    (*1時間の講演後、質疑応答30分ほど)
    講師:江里口友子氏(江戸東京博物館学芸員)
    参加費:無料
    会場:日本橋162ビル8階(中央通り沿い、一階は奈良まほろば館)
    定員:100名 定員になり次第締め切り
     
    ご参加希望のお申込みは、
    ・「月刊日本橋編集部」03-6202-1221
    までお電話にてお申込みいただくか、
     
    ・「日本橋地域ルネッサンス100年計画委員会」
    ご担当者・高村様 takamura@nihonbashiplaza.co.jpまでメールにてお申込み下さいませ。
    どちらの場合もお申込み時に「古裂古美術 蓮のホームページを見ました」とお伝えいただければと思います。
     
    三月弥生の宵のひとときに、約200年前の大江戸日本橋の地に思いを馳せてみるのも愉しいことです。
     
     

  • 三月 弥生

     

     
     
    三月になりました。
    雛の季節はやさしい色彩や若草萌える色合いを身近によせてみたくなります。
    陽の光の暖かさに、水に関係した文様がそろそろ気になりだすのもこのころです。
    水面(みなも)の静。ゆるやかに揺らぐ流水文。
    やきものや染付、蒔絵などの絵付に見られるような楚々とした水草や沢瀉の文様の裂などを探してみたいものです。
    今月もどうぞよろしくお願いいたします。