
緋縮緬地秋草刺繍小袖断片裂
江戸時代 18世紀
十月も早後半となりました。
朝晩冷え込むようになり、秋もしだいに深まりゆく頃です。大気が冷えてきたからなのか、この時季晴天の夜空は、冴えて明るくなってきたように感じられます。闇とも異なる蒼に属したあの色を、あれを何色というのだろうと思いながら、帰り道に夜空を見上げることが多いです。深く深い群青の色…私は蒼の色を感じます。夜であっても空は蒼を忍ばせ、湛えています。そして目にする夜空のあの背後には、真の闇の暗黒の宇宙が果てなく拡がり在るのでしょう。それとも宇宙は光輝いているのでしょうか。夜空は宇宙の一番外側の色なのでしょう。
移転開店した九月からひと月が経ちました。皆様にお越しいただけまして本当にありがとうございます。現在は十一月の展示会「裂のほとりⅩ」の準備作業のため、店舗はお休みさせていただいておりますが、会期終了後の営業日も追ってお知らせいたします。十一月、お近くの際はお気軽にぜひお運び下さいませ。
金沢展に関するお問い合わせを、春頃から今月にかけまして複数頂いておりますこと、本当にありがとうございます。とても励みをいただき、昨年十一月に開催させていただきました金沢展のことを振り返り、想いました。残念ながら今年開催はありませんが、先日のお知らせのとおり、是非また機会がございましたら行わせていただきたく、スケジュールのタイミングを今後も気にしてゆきたいと思っております。私もまた開催できる時を心より楽しみにしております。
そして十月七日に、お蔭様にて店をスタートさせて三十周年を迎えることができました。皆様に心より深く感謝いたしております。これからも続けられるところまで美しいもの、古く美しい色彩を皆様にご紹介させていただきたいと思っております。今後とも、何卒よろしくお願い申し上げます。
最後になりましたが、十一月十日から三日間、新店舗にて展示会「裂のほとりⅩ」を開催いたします。会期が近づいてまいりました。この度で十回になる「裂のほとり」は、今回表具裂展です。表具の世界は仕覆の世界と同様、非常に奥深い世界になり、取り合わせる裂によって本紙の印象がまるでかわってしまいます。表具裂に未熟な自分が「表具裂展」をおこなうことに躊躇はありましたが、時間をかけて集めた裂を皆様に御覧いただけましたら幸いです。表具裂展ですが仕覆にお使いいただける裂、染織資料として大変魅力のある小さな裂(表具の一文字・風帯)を多く出品させていただきます。一文字や風帯としてでなければ出てこないだろう、(大きな状態で出てくることは難しいだろう、)貴重な裂もあります。コレクターの皆様、どうぞルーペをお持ち下さい。表具裂をお探しで寸法もお探しのお客様、どうぞメジャーをお持ちいただけましたらと思います。その他可愛いらしい古裂も店内に並べます。古裂の愉しい展示会となりますよう、会期までの間、日々勤しんでまいります。
今月のご挨拶のつもりが長くなってしまいました。申し訳ございません。
本日は秋晴れの一日です。
残る十月も、どうぞよろしくお願いいたします。