
金沢にて、お堀の石垣の上の月。

柊の花。
十一月も半ばとなりました。
多くの皆様にお運びいただき、楽しく過ごさせていただきました「裂のほとりⅨ-金沢にて-」から10日と少しが過ぎました。今も一日の中に開催の間のことが思い返されております。会場の展示風景や、お天気だった窓からの自然光、急な階段を上ってきて下さったお客様、開催時間ぎりぎりまでアイロンをかけていた自分、いろいろなシーンが思い出されます。裂はどこまでも愉しく、また手がかかり、また、手間をかけたぶん本来の良さが蘇ってきてくれるので、その様子が見たくなります。古裂は尽きない愉しさがあります。小さな断片裂はとくに愉しい世界です。
この度の展示会では、早朝まだ暗いうちからお待ち頂いた方がいらしてくださるなど大変恐縮いたしました。そしてそれは古い裂を探し、先々に伝えてゆくことの必要性と大切さとに、自身の中に繋がってゆきました。だんだんと姿を消していっている、独特の美しさを持つ日本の古手の裂たちです。引き続き集めてまいります。またご紹介させていただけますように。
会期終了後、東京に到着したすべての荷を開梱しきれていないうちに、再びぱたぱたと過ごしております。会に出席し、入手した裂の時代産地に思いを巡らせ、いつもと変わりのない裂の日々です。
写真は金沢に行く前のもので、いつもの道に今年も咲いた柊の花です。柊は金木犀とほぼ同じ花になり、くちなしの花の香りに似た芳香を辺りに漂わせます。柊の花が咲くと、もう季節は冬へと移ろいます。十一月も残り半分です。
どうぞ皆様お気をつけてお越し下さいませ。