2018.2

  • あられやこんこ

    鶸浅葱色の江戸期の紬 残片裂


     
    早春のきびしい寒さだった今日、所用があって店に14時少し前に着きました。
    午前中の出先では、少しの間小雪が舞った時がありましたが、銀座に着くと、あられが降っていました。空からごま塩のような小粒が降り落ちて、路にころころと弾むのを見て、ピーコートの濃紺のひじを傘から出してみました。また雪の結晶が見えたらいいと思ったのですが、あられはほんとうに小さな小さな氷の粒なのですね。弾むわけです。雪の結晶見れず。(いつも携帯のルーペをのぞいたという。)
    あられの降る二月もあと数えるほどになりました。早春からしだいに春へと季節は移りゆきます。
     
     
     

  • 今日のできごと

     
     

    型染め蝙蝠図半纏 大正頃か


     
    本日店まであと少しのところに来た時、何やらわらわらとたくさんの人たちが群れていて、路の角やこちらの路上でスマホを見たり、何かを待っているような、辺りに異様な緊張感?が漂っていたので、これから芸能人のどなたかの撮影でもこの界隈であるのだろうか、などと思ったら、その緊張感の発生もとは泰明小学校でした。ニュースを思い出しました。
    泰明小学校の校門前には特大レンズのカメラが来ておりましたし、にわかカメラマン?らしき方々もたくさんでした。校門のすぐ前には覆面パトカーも停まっておりました。
     
    昨日もこの様だったのか、昨日は出先だったため店に来られず様子がわかりませんでした。
    はあ、何だかリアル、と思い、漂う緊張感の横を通り過ぎました。
    お洒落な洋式の校門がとても素敵なこちら、泰明小学校は、夏には校庭に櫓が立ってほのぼのと盆踊りもおこなわれています。
     
    写真は今日のできごととまるで関係ありませんが、型染め蝙蝠図の半纏です。
    襟部分が欠損して現れたのですが、その事は何ら鑑賞に影響せず、いきいきとした蝙蝠の躍動感とその迫力にぱっと心を掴まれました。蝙蝠は縁起の良いアイテム。立春が過ぎた一年の始まりに、蓮のささやかな店内で蝙蝠にはばたいてもらいました。
    今日のできごと、終わります。
     
     

  • 二月 如月

     

    蹴鞠装束 葛鞠袴の露革  江戸時代


     
    草木張月の二月になりました。
     
    昨年とくらべて今年の冬の寒さはことのほか厳しくて、たくさん着込んでいても店の中は足元が温まらないものです。寒いことが理由なのか、単にそれを理由にしているだけなのか、この冬はどうも甘いものに目がなくて餡子ものについ手が伸びてしまいます。
     
    四谷のわかばさんの、こんがりと焼けたたい焼きを受け取るときにいつも熱烈に見てしまうのは、たい焼きのおつりを乗せる真四角な木の台です。
    大きなサイコロのような、何の飾り気もない木材(もし何か由緒あるものでしたらすみません。)なのですが、お客様のおつりの受け渡しで長年使い込まれて、手ずれで台の中央がすり減りくぼんでいるのです。そのなだらかで自然な曲線、時間が刻まれた風情といったら、無口で貫禄があってなんと素敵な!と惚れ惚れしてしまうおつりの台なのです。初めて目にしたときはあまりの素敵さに動揺して、たい焼きとともに盃も手にしたいくらいの気持ちになりました。憧れのおつりの台、きっとご存じの方もいらっしゃると思います。
    先日も甘いものに呼ばれて夜空の下四谷に向かいました。束の間おつりの台に熱い視線を送り、焼きたての熱々のたい焼きを店内で頂きながら、アイロンがけや整えたい江戸の古裂の宿題ごとを、あれこれと思い浮かべました。
    間もなく節分です。季節の足音がしています。
    今月もどうぞよろしくお願いいたします。