2020.3

  • やすらい花

     

    溜池山王で見た枝垂桜

     

    本日の午前中、用事で溜池山王界隈へ行きました。大通りから裏道へ入り暫く歩くと、大きな建物の敷地内なのですが、ちょっとほっとするような景色の場所があります。人工ですが、奥の方に小さな滝が造られていて、その水音がいつも聞こえています。周囲の植物の手入れも行き届いており、何かそれが事務的な冷たい感じを受けません。その空間で、自然が愛でられているような印象です。一度その滝の前まで行ってみたい気になりますが、柵はないものの、人の行き来を見たことのない、静かな敷地に入ってゆくことがはばかられ、いつも滝が見えるところで暫し足を止めてから、今日もまた通り過ぎてきました。

     

    その敷地の手前に在るまだ若そうな枝垂桜が、花数少なく、とてもふんわりとした立ち姿で今日咲いておりました。逆光でうまく色が撮れませんでしたが、昔贈答品で薔薇の花の形をした桃色の角砂糖がありましたが、ちょうどあのような感じです。薔薇の角砂糖が、愛らしくふんわりと枝垂れているようでした。ふと、「やすらい花」のことを思いました。今の状況が少しでも早く終息に向かいますよう、無病息災を願いました。

     

    明日28日は仕入れで足を延ばす予定でおりましたが、東京都からの今週末の不要不急の外出自粛要請を鑑みて取りやめました。スケジュールどおりではございますが、明日土曜日お店はお休みにさせていただきます。お客様に御来店いただきますにも今週末の状況をふまえますと、移動中お客様に差し障りがあるといけないと思っております。何卒ご了承いただきたく、どうぞよろしくお願いいたします。
    なお、古裂のお問い合わせはいつものように、お気軽にお電話にてお尋ね下さいませ。また愉しい古裂がご紹介できますよう、引き続きいろいろとつとめてまいります。

     

     

     

     

     

  • 春をゆく

     

     

    ある日の銀座四丁目

     

    本日は気温が上がり、東京では21℃もあったようです。
    いつも歩く、郵便局のある道路沿いの桜並木は、桜の蕾がずいぶんと膨らんでおりました。この春は、どこもがいつもどおりの春ではありませんが、こつこつと古裂に向かういつもの時間は、何も変わりはありません。アイロンの音シュウシュウ、窓の外はもう暗くなりました。近くのバーから昭和の音楽らしき音が小さく聴こえてきます。蓮の店の周りは小さなバーがたくさんあるのです。

     

    写真は先週の銀座四丁目の風景です。お天気で、風のある日でした。

     

     

     

     

     

  • 弥生 三月

     

     

    桃の節句によせて  
    無地裂 麻と絹 江戸時代

     

    柳の芽吹き

     

    三月になりました。
    昨日の京都出張では、帰りの夕刻にかなりの雨が降りました。雨足の強まる中、通りかかったお花屋さんの店先に良い桃の花が売っていたので、傘をさしながら蕾の頃合いの枝を選ばせてもらいました。今求めておかないと、お雛様に飾る桃をうっかり買いそびれる気がしてです。雨がセロファンにかかり、水玉の反射で桃の花の色がいっそう濃く感じられました。

     

    ふと見ると、脇のほうのバケツに細い柳の枝がたっぷりひとまとめにされていました。柔らかに萌え出た鶸色の芽が、勢いを秘めて枝先に順々に連なっています。付いているお値段もびっくりするほどお安くありました。水に挿していると、おそらくそのうちに根がでてきそうです。さすが京都のお花屋さんは何気に素敵なものを売られはる、などと下手な京言葉?を心に浮かべて、たっぷりとまとめられた柳の枝も包んでもらい、お土産にして帰路につきました。室内に桃の花とたくさんの柳の芽吹き、江戸時代の草木染めの無地裂とささやかなお雛様。

     

    色たちに厄祓いを祈念して、暮らしに春を迎えようと思います。
    今月もどうぞよろしくお願いいたします。