茶生絹有職装束解き裂
江戸時代 18-19世紀
六月になりました。
早くも一年の半分が過ぎようとしています。六月三十日は夏越の祓です。
この日は三角形のういろうに甘い小豆がのるみなづきを、今年後半も無病息災で過ごせますよう、祈願しながらいただきます。夏への時間を橋渡しする、美味しくて楽しみなお菓子です。
このごろはデパ地下のお菓子屋さんでは、桜の頃からみなづきが売られております。お菓子屋さんをのぞくたびに、みなづきのあることに気を取られてしまうのですが、やはり季節を違えたくない思いがあって、せめて六月の声を聞くまではと、ひたすら眼差しだけ向けておりました。そんなことで、ようやくみなづき解禁です。三十日には早いですが、次回は包んでもらうことにいたします。今年も無事に頂けるという、そのことに感謝して。
数日前の出張の京都では、夕刻前にお気に入りの和菓子屋さんに立ち寄ってみましたが、足どり急いだものの、営業時間に間に合いませんでした。残念でしたが、ぽちぽち周辺を歩くことにし、今回の出張で仕入れた古裂たちに思いを巡らせました。
歩きがてら立ち寄ったお店に、実山椒の佃煮の袋が美しく並べられてあり、先日久しぶりに出かけた雑木林で山椒の大木をみつけたことが思い出されて、ひとつ佃煮を買い求めました。その大木には山椒の実が降るほどに、それは見事に生っておりました。実を採る人もいない、陽当たりから離れた場所にひっそりと葉を繁らせている山椒の大木に、淋しくはないのかと、何となく語りかける思いがしたものです。こちらのそんな思いはよそに、自然の中にいてのびのびと枝を張らせている山椒なのでしょう。
画像は桔梗に似た花が織り上げられている装束裂です。
梅雨になる前の空気と似合うような気がして、六月最初の写真にいたしました。
地色の茶の色合いがやわらかできれいです。
今月もどうぞよろしくお願いいたします。