2020.2

  • 春の芽吹き

     

    瞬く間に二月が終わろうとしています。
    今月は、引き解いた裂を洗い整えてアイロンがけをする作業をこんこんと続けておりました。洗えるものと、そうでないものを見極めて作業をするのですが、汚れが落ちますと麻織物などは質感が蘇り、染め色も冴えてきて、目にも掌にも清々しいものが感じられます。それらの古裂を室内に広げていると、あらためて日本の色が持つ繊細な美しさや「色」の力といったものに気付かされます。古い裂の魅力ある色彩と対話しながら、また様々な古裂と出会ってゆきたいと思った今月です。

     

    道端で紫陽花の枝が芽吹いているのを見かけました。うちの鉢植えの銀杏は、まだ芽吹いておりません。春が来て、これから辺りの風景が変わり始めます。
    まもなく三月です。

     

     

     

     

     

  • 如月 二月

     

     

    籠目刺繍のある小袖断片裂 江戸時代

     

    二月になりました。
    一年の中で一番好きな月がやってまいりました。春まだ浅く、冷たい大気の中にひそむ春の気配に、移りゆくものの何か「間」といったようなものが感じられ、夜の闇も、一年の中で一番静かなような気がしてしまいます。二月には草木の芽が張る「草木張月」(くさきはりづき)という美しい別名もあります。

     

    節分に、柊や鰯の頭等と共に、竿の先に籠を伏せて鬼を追い払う習俗があるので、それにかけて籠目のある古裂を探してみました。写真はその古裂で江戸後期頃の小袖の小さな断片裂です。変わった籠目の刺繍で、何という籠になるのか名称がわかりません。深さがあるので魚籠でしょうか。ちなみに節分に籠というのは諸説あるようですが、籠は鬼の目より目数を多く持つので、鬼を怖れさせる力があるのだそうです。

     

    春が近づいてまいります。
    今月もよろしくお願いいたします。