今年の柊の花。

 

十月も終わりに近づきました。
先日郵便局へ行く折に、いつもと違う道を歩きました。通る道は大通りに出るまで、高い建物が両側にずっと続いている道になります。建物の前に広く植え込みの場所を取り、きれいに植物を植えているビルもあれば、すぐの入口がぶ厚いガラス戸のみの無機質なビルもあります。その道を通る時は、ビルの植え込みの植物を何となく見ながら歩きます。

 

暫く歩いていると、あるビルの広い前庭に、間隔をおいて行儀よく真白い玉すだれの花が、それは沢山咲き揃っていました。玉すだれはとても好きな花なので、瞬間わあっと思い、思わず足を止めて玉すだれの花を眺めました。間隔をおいてかなりの数が植えられていました。この時季にこの道を歩いたことがなかったのか、そのビルの前庭に玉すだれがこうしてあることを知り、いつもと違う道を歩くのはよいことだと、忙しない時間にひと呼吸ついた思いでした。それにしても、淋し気な花の印象に寄りがちな玉すだれの花を、あのように広く点々と植えられた植木屋さんその人の感覚の良さがずっと思われて、その郵便局に行った日のあともその道を幾度か通った最近でした。玉すだれが沢山点在している様子を眺めたあとの郵便局の手前では、もう花を落とした金木犀の木の根元あたりで、チン、チン、と鉦叩きの鳴き声が聞こえておりました。身近な場所で十分に秋を感受し、足元のちいさな秋の音に耳を澄ませていると、今年もあと二ヵ月なのかといった思いが心によぎってまいりました。金木犀のあとは、柊の白い花が辺りに芳香を漂わせます。初冬という言葉が思い浮かぶ柊の花です。

 

展示会「裂のほとり」の準備のため、店を長くお休みさせていただいており、ご不便をおかけしておりまして、大変申し訳ございません。体調を崩しているのではとのご心配をいただくお優しいご連絡をいくつか頂いておりますが、そうではありませんで、申し訳なくも、どうもありがとうございます。裂の最初からの準備がやはりとても時間が要るため、古裂の日々で、古い裂の作業に勤しんでおります。

 

11月が近づいてまいりました。皆様にお愉しみいただけます「裂のほとりⅪ」となりますよう、引き続き精進してまいります。
残る今月も、どうぞよろしくお願いいたします。