2020.5

  • アヤメの染め紙

     

     

    アヤメの染め紙

     

    咲き終わったアヤメを摘むと指先が紫色に染まったので、そこにあった和紙に摺ってみると、とてもきれいな色紙になりました。どこに見せる気もなくくしゃくしゃと摺ってしまったのが少し残念です。

     

    このアヤメは花が咲くところを偶然みることができました。机で仕事の作業中、視界に何か動くものが感じられたので顔を上げると、目の前に挿していたアヤメの左側の花弁がピン、と中心から離れて揺り動き、ゆっくりとゆっくりと、横に広がり咲き始めたところでした。お祭りのような嬉しさでした。花が咲くところに立ち会えたのはこれで二度目です。花が咲く時、花はとても力を出していることが感じられます。
    最後に和紙に色に来てもらい、たった一度の時を見せてくれたアヤメにはまだここにいてもらいます。

     

     

     

     

     

  • ヤグルマギクとエジプト

     

     

    ヤグルマギク

     

    郵便局の帰り道、お花屋さんをのぞくとヤグルマギクがありました。藤色めいた色の姿のよいものを選ばせてもらい、数本持ち帰りました。

    ヤグルマギクというと、ツタンカーメンの棺の中に、ヤグルマギクの入った花束が入れられていたという美しい話を思い出します。ファラオで繋がり、MIHO MUSEUM所蔵のガラス彫刻作品「ファラオ頭部(おそらくアメンホテプ3世)」のことも思い出されました。こちらの心を掴むあの神秘の眼、その美の力たるや、MIHO MUSEUMの所蔵品の中で最も好きな作品です。エジプトの記憶を微かに纏うこの花を見ていたら、信楽の桃源郷に安息するファラオに久しぶりに逢いに行きたくなりました。その道のりは、まだ少し先のこととなりそうです。

     

     

     

     

     

  • 皐月 五月

     

     

    木綿黄地稲妻に鶴亀楓文紅型裂 19世紀

     

    五月になりました。
    錆朱色の芽吹きを見せていたケヤキの木も、今はもう青葉が繁りだして風に葉擦れの音を聞かせてくれています。外はもう初夏の日射しです。
    この度の状況が続いておりますが、皆様もいかがお過ごしでしょうか。こちらも今できることにつとめています。相変わらず一日が過ぎるのがとても早いです。
    店舗営業の再開はまだ見えておりません。ご不便をおかけいたしますが、何卒よろしくお願い申し上げます。何かお問い合わせがございましたら、お気軽にご連絡下さいませ。

     

    写真は沖縄の紅型裂です。縁起のよいモチーフの鶴と亀です。鶴は千年、亀は万年といいます。日本のみならず世界において、末永く穏やかな時が続いてくれますように。
    引き続きどうぞ皆様もお気をつけてお過ごし下さいませ。
    今月もどうぞよろしくお願いいたします。