2019.9

  • 秋になりました

     

     

    特別企画展 裂のほとりⅥ -縞・格子・絣 展-
    麻地格子に銀杏文様型染大風呂敷 江戸時代

     

    ことん、と気温が下がり、ずいぶん涼しくなりました。日射しも、とくに夕方には、もう秋だなと思えます。
    先日道端でとても好きな玉すだれの白い花を見かけました。店が原宿に在った頃は、ベランダにいくつもの山野草を持っていて、その中には玉すだれもあり、毎年花を楽しみに眺めたものです。

     

    植物には幼い頃の想い出と重なるものが多くあります。玉すだれの花も、幼い頃遊んだうす暗い通り道の塀の脇に、いつも季節になると咲く花でした。とりたてて目立つ花ではないことが、子供心にもわかりましたが、何か静かな女のひとのようで、その花が咲いている間は、塀の道を玉すだれを見ながら自分も静かにして通った記憶があります。大人になり、この花の好さがわかるようになってから、秋の訪れを知らせてくれるこの花のことがとても好きになりました。やはりもの静かな女のひとのように思えることは、今も変わりありません。

     

    麻地格子に銀杏文様の型染は、秋の季節を映して染めあげられたものでしょうか。
    10月の展示会の準備を進めております。
    いつもインスタグラムもご覧いただきまして、皆様どうもありがとうございます。

     

     

     

     

     

  • 特別企画展 裂のほとりⅥ DMができました

     

     

    特別企画展 裂のほとりⅥ
    -縞・格子・絣 展-

     

    ようやく涼しさがやってまいりました。
    10月展示会のDMが出来上がりました。おところを頂いておりますお客様に、週明け頃からお送りさせていただく予定です。ご覧いただけましたら幸いです。

     

    縞・格子・絣の古裂、自分なりに時間をかけていろいろと集めましたが、その間、つくづく裂の奥深さと、古手の裂が見つからないこと、補充がなかなかかなわないことをつよく感じてまいりました。繊維製品の古裂の世界は、やきものの世界とはまた異なり、経年の使用と繊維の持つ性質上、伝存することが大変困難です。しかし たとえひとひらの姿になっていても、天然染料で染められた時代の日本の染織品の美しさには独特のものがあります。やはりそこには日本の風土から生まれたことによる、和みを持つ日本的なもの、それは色調であったり、線のリズムであったり、ある”調べ”といったものが織や染めの中に静かに宿っている、染織の世界から、この国が深く持つ本来の香りのようなものに気付かされるような、そんな思いになることも、ふとあります。遠く続く時間の中で、今に伝え遺された裂の色彩や風合いから、時折り多くのことが感じ取れるような気がいたします。染め色ひとつにしても、その染料となる草木を採取した人がいます。そこには季節があります。遠い時代の季節に思いを巡らせるのも愉しいことです。「特別企画展 裂のほとりⅥ -縞・格子・絣 展-」、ぜひご覧下さいませ。

     

     

     

     

     

  • 長月 九月

     

    納戸地兎に一重蔓牡丹唐草文金襴 江戸時代

     

    9月になりました。
    猛暑の8月がようやく終わり、これから少しずつ涼しさへと向かいます。耳を澄ますと、昼間でも草むらからは、虫の音が聴こえてくるようになりました。9月で思い浮かべるのは、十五夜、秋祭り、彼岸花… 秋の訪れを日ごとに感じて、残る今年の月日のことなどを思い巡らせたりするのです。

     

    来月10月は、古裂古美術 蓮の展示会を開催いたします。
    展示会や小冊子のタイトルにある「裂のほとり」。2017年の24周年記念に際し、初めて編んだ小冊子のまえがきの中で、こちらについて記したことがあります。「山のほとり、湖のほとり、といいますが、古い裂の傍にいることを「裂のほとり」と表現させていただき、冊子のタイトルにいたしました。古いものと関わる仕事の中で、私はこの言葉を傍に置きたいと思っております。(略)」以来、「裂のほとり」という名の展示会をおこなわせていただいております。

     

    時間の経過の中で、小さくひとひらになっていった時代の染織品たち。これからも続けられるところまで、古い裂の美しさと愉しさを探してまいりたいと思います。
    9月から出品予定の裂をHPとインスタグラムにてご紹介させていただきます。
    今月もどうぞよろしくお願いいたします。