大正時代の詩人画家、竹久夢二の生誕140年・没後90年記念特別展のご紹介です。
石川県金沢市の金沢湯涌夢二館と東京都千代田区が連携し、金沢と東京・日比谷の両会場にてこの秋開催されます。(金沢は現在開催中です)
このたびこちらの展覧会に於きまして、夢二の集めた裂に関し、大変微力ですが、ささやかですが裂の調査に関わらせていただきました。現在開催中の金沢湯涌夢二館での会期終了後、11月に東京・日比谷の千代田区立日比谷図書文化館にて、同展覧会が開催されます。秋の深まる頃、あらためて竹久夢二の魅力とその溢れる個性に会いに行かれてはいかがでしょう。とても楽しめる記念特別展です。
竹久夢二生誕140年・没後90年記念特別展
「夢二式モデルルームへようこそ!-夢二好みの室内空間-」
金沢湯涌夢二館
2024年8月31日(土)~10月21日(月)
石川県金沢市湯涌町イ144-1
076-235-1112
https://www.kanazawa-museum.jp/yumeji/
★11月に東京・日比谷で開催されます。
千代田区立日比谷図書文化館
2024年11月2日(土)~12月15(日)
東京都千代田区日比谷公園1-4
03-3502-3348
https://www.library.chiyoda.tokyo.jp
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この記念特別展の魅力と愉しさは、従来の「竹久夢二展」で注目される美人画や人物表現から、夢二の画中にみられる室内空間へと焦点を移し、室内に描かれた夢二好みのアイテムをつぶさに追っている点にあります。夢二は自身の感性で画中の人物の背景となる「空間」をどのように構成してその画の表現に効果を持たせているのか、その夢二らしさと、夢二流儀の「室内空間」という点に着目した新鮮な内容の記念特別展となっています。
画家・蕗谷虹児は、夢二が大正7年末頃から二年半あまり住んだ菊富士ホテルの室内を回想し、夢二が身近で使用するもの、椅子や家具類に至っても「…(略)何処を見ても夢二式ならざるはないその部屋だった」と文に記したといい、この「夢二式」という言葉は夢二の強烈な個性と感覚、独自の世界観を如実に言い表しているものと思われます。本展覧会では、夢二の画にみられる様々なアイテムが配置された室内空間を「夢二式モデルルーム」と称し、特別記念展のタイトルに冠されています。
また、夢二は幼少期から布を集め、古裂を扱う店を覗いていたことが伝えられており、黄八丈や縞・格子裂など、夢二の集めた裂がスクラップブックにされて遺されています。古く貴重な19世紀の久米島紬の断片を夢二が大切に所有し、それについて言葉を遺していたことも分かってまいりました。今後夢二と裂との深い繋がりが、時間のかかることと思われますが、少しずつ段階を追って整理されてゆくことが可能であれば、夢二研究に於いて夢二と裂についてのひとつの分野が形作られてゆくのではないでしょうか。裂を偏愛していたと伝えられる夢二その人の、生まれ持った感覚が裂へと向かわせたものは何だったのかと、この展覧会の図録のページを繰りながら思うのです。おすすめの展覧会です。
*図録一部 1,000円(税込)
東京展が開催されるまでのご購入は、金沢湯涌夢二館へお問い合わせ下さい。